最近、株と並行して金(ゴールド)の価格が史上最高値を更新するニュースが続いています。
このゴールド高騰の大きな背景にあるのが、「世界的なドル離れ」の動きです。
通常、金利を生まない金は「安全資産」とされますが、なぜ今、これほどまでに金が買われているのでしょうか?
この記事では、「ドル離れ」と「金価格」の関係を深掘りし、なぜ金が「究極の代替通貨」として選ばれているのかを、投資家が知っておくべき3つの理由から徹底解説します。
第1章:ドル離れと金利、価格のシンプルな関係
ドル離れの動きが金価格に影響を与えるルートは、主に2つあります。
1. ドル安観測による「代替通貨」需要
ドル離れとは、各国が「米ドルの相対的な地位を下げる」行為です。これにより、国際市場では米ドルの価値が下がる(ドル安になる)という観測が強まります。
- 金利:米ドルは銀行預金や米国債にすることで金利が付きます。
- 金:金は金利が付きません。
しかし、ドル安が進むと、「米ドルを持っておくメリット(価値)」が相対的に低下します。
その結果、「どうせ金利がつかないなら、価値が普遍的で世界中どこでも使える金を持っておこう」という動きが強まり、金がドルに代わる「究極の代替通貨」として買われます。
2. 地政学リスク回避としての「究極の安全資産」
ドル離れの背景には、米国の金融制裁などに対する警戒心があります。
- 米ドル:政治的な影響を受け、凍結されるリスクがある。
- 金(ゴールド):国や政府の信用とは無関係な現物資産。
政治的な混乱や紛争が起きると、どの国の通貨や国債も信じられなくなります。
そのような時、「誰の負債でもない」金が、国境を超えた最後の砦として選ばれ、爆発的に需要が高まります。
第2章:ゴールド高騰を加速させる「3つの巨大な買い手」
金価格を押し上げているのは、個人投資家だけではありません。
特に影響力の大きい3つの巨大な買い手の存在が、ドル離れ時代における金の地位を確固たるものにしています。
巨大な買い手1:各国の中央銀行
最も重要なのが、各国の中央銀行です。彼らは、自国の外貨準備における米ドルへの依存度を下げるため、米ドル資産を売却し、金(ゴールド)の準備高を歴史的なペースで増やし続けています。
特にBRICSなどの新興国が、外圧に強い資産として金を選んでいるため、これはドル離れ時代の長期的な金の需要を強く下支えしています。
巨大な買い手2:インフレを恐れる投資家
米ドルを大量に刷り続けた結果、世界中でインフレ(物価高)が進行しています。
インフレ下では、現金の価値は目減りします。
- 株式:企業の業績が伸びるため、インフレに強い。
- 金(ゴールド):実物資産であり、通貨の価値が下がっても、金の購買力は維持されやすい(インフレヘッジ)。
投資家は、ドルの価値低下とインフレリスクの両方に備えるため、金への投資を増やしています。
巨大な買い手3:ドル圏外の富裕層
米国の金融政策や政治情勢に直接影響を受けたくない、特に中国や中東などの富裕層にとって、金は「自国の政府からも海外の政府からも監視されにくい」プライベートな資産です。
ドル圏外の富裕層による秘密裏の金需要も、高値維持の大きな要因となっています。
第3章:私たちの投資戦略への影響
ドル離れと金高騰は、私たちがポートフォリオを考える上で重要な示唆を与えてくれます。
- 分散投資の強化:「株と債券」の伝統的な分散に加えて、「株(成長資産)」と「金(究極の安全資産)」という組み合わせの重要性が増しています。資産の5%~10%を金(ゴールドETFや現物)に充てることで、ドルの信頼性低下リスクに対するヘッジとなります。
- 実質金利のチェック:金価格は、「実質金利」(名目金利-インフレ率)に強く連動します。実質金利がマイナス(0%以下)であるうちは、金利を生まない金の魅力が増します。今後のFRBの金融政策とインフレ率の動向を注視しましょう。
金は利息を生まないため、資産の「成長」を担う主役にはなり得ませんが、「資産の守り」と「究極の保険」としては、ドル離れの時代において、その存在感を増しています。
あなたのポートフォリオに、金の役割を再定義してみませんか?
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