今のAI相場、最大のリスクは何か

6/28 ▼国際決済銀行(BIS)が「AIバブル崩壊」を世界経済への最大の脅威の一つと警告 著名投資家ルキール・シャルマ氏 ▼メタ・アマゾン・マイクロソフトが「最大の債券発行企業」になったと指摘 唯一の引き金 ▲シャルマ氏は「金利上昇」が全てのバブルを弾けさせると指摘 一方で ▲マグニフィセント7の予想PERは過去10年平均並みの約30倍、ITバブル期(約51倍)ほど極端ではない 6/28 ▼国際決済銀行(BIS)が「AIバブル崩壊」を世界経済への最大の脅威の一つと警告 唯一の引き金 ▲シャルマ氏は「金利上昇」が全てのバブルを弾けさせると指摘

AI相場のリスクを徹底解説・2026年6月29日

今のAI相場、
最大のリスクは何か

国際決済銀行(BIS)が6月28日、AIバブル崩壊を世界経済への最大の脅威の一つと警告しました。何が最大のリスクなのか、その正体と、具体的に備える方法を整理します。

最新の警告

BISが鳴らした警鐘

国際決済銀行(BIS)は6月28日に公表した年次報告書で、AIバブル崩壊・インフレ・高水準の公的債務がもたらす財政リスクを、世界の繁栄にとって最も憂慮すべき脅威として挙げ、ショックを増幅させかねない金融の脆弱性が潜んでいると指摘しました。BISは、各国の中央銀行間の政策協力を主導する、国際金融システムの安定を担う機関です。この警告は、市場の熱狂とは別の角度から、リスクの実体が何かを考えるきっかけになります。

リスクの正体

「現金」から「負債」への切り替わり

著名な投資戦略家ルキール・シャルマ氏が指摘する最大のリスクは、ビッグテックの資金調達構造そのものの変化です。

これまで 潤沢な現金で投資 メタ・アマゾン・マイクロソフトは長年、現金を多く抱える健全な財務体質で知られていた。
「最大の債券発行企業」に AI競争を支えるため、この数ヶ月で大量の社債を発行する側に転じている。
シャルマ氏の指摘 景気拡大末期の典型的兆候 潤沢な現金から負債への切り替わりは、過去のバブルでも繰り返し見られたパターン。

これは、これまでの記事で取り上げてきた「ハイパースケーラーの設備投資がフリーキャッシュフローの限界に近づいている」というテーマの延長線上にある変化です。Alphabetの株価急落(6月22〜23日)の背景にあった「フリーキャッシュフローの悪化」は、まさにこの「現金から負債へ」という転換の一端でした。シャルマ氏は、大手AI企業の評価額も、長期的な収益やフリーキャッシュフローで判断すれば、すでにバブルの領域に近づいていると述べています。

なぜ最大のリスクか

「金利上昇」という、たった1つの引き金

すべてのバブルを弾けさせる要因が1つある。それは金利の上昇だ。 — ルキール・シャルマ氏

負債で資金を調達する構造になると、金利の上昇が二重の打撃になります。一つは、調達コストそのものが上がり、新たな投資や既存債務の借り換えが重くなること。もう一つは、将来の利益を現在の価値に換算する際の割引率が上がり、AI関連企業の高い株価評価(バリュエーション)そのものを正当化しにくくなることです。シャルマ氏は、自分が相場の天井を正確に言い当てられるとは主張していないとしつつも、この一点が、これまで個別の悪材料(人材流出、増資、決算の数字)として表面化してきたリスクすべてに共通する、根本的な引き金になり得ると指摘しています。

反対の見方

本当に「バブル」と言えるのか

一方で、現時点では過度な悲観は禁物だとする、より落ち着いた分析もあります。

「まだバブルではない」とする根拠

  • マグニフィセント7の予想PER(均等加重)は約30倍で、過去10年平均と概ね近い水準
  • ITバブル期の情報技術セクターの予想PERピーク(約51倍)と比べ、現在は約27倍に留まる
  • ナスダック総合指数の株価上昇(2023年以降約2.4倍)は、予想EPSの拡大(約1.8倍)とおおむね連動しており、ITバブル期のシスコシステムズ(EPS1.5倍に対し株価5.5倍)のような極端な乖離は見られない

それでも残る懸念

  • AI周辺サプライチェーン(半導体・光モジュール・ストレージ等)の上昇率は、ドットコムバブル期を上回っているとの分析もある
  • シリコンサイクルの過去のパターンから、2026〜2027年が調整時期にあたる可能性
  • OpenAI・Anthropic・SpaceXという、合計評価額が4兆ドルに迫る3社の大型IPOが集中する予定で、市場の資金吸収(流動性低下)が懸念される

つまり、「中核のAI企業のバリュエーション」自体は、ドットコムバブル期ほど極端ではないというのが多くの分析の共通点です。しかし、それを支える「資金調達の構造」が現金から負債に切り替わっていることと、「周辺サプライチェーン株」の過熱、そして大型IPOによる資金吸収という、複数の要因が積み重なっている点に注意が必要、というのが現実的な見方になります。

備える方法

具体的に、何をすればいいか

「リスクがある」と分かっても、実際に何をすればいいかが重要です。以下、具体的な対応を整理します。

  1. 金利の動向を、AI株のニュースと同じくらい注視する シャルマ氏の指摘通り、金利上昇が最大の引き金になるなら、各国中央銀行の政策金利・長期金利の動きは、AI関連の決算ニュースと同じレベルで追いかける価値があります。
  2. ビッグテックの「負債」関連の指標を確認する 四半期決算で、フリーキャッシュフローの推移とともに、有利子負債・社債発行額がどう変化しているかを確認します。現金から負債への切り替わりが進んでいるかどうかが、リスクの進行度を示す指標になります。
  3. AI関連株への配分を、ポートフォリオ全体の一部に限定する 以前の記事でも触れた通り、高ボラティリティのテーマ株は、ポートフォリオ全体の一部(目安として1〜3割程度)に留め、残りはインデックスファンドのような広範な分散投資で土台を作ります。
  4. 「提供側」だけでなく「利用側」にも目を向ける AIモデルを構築する側の企業は、巨額の設備投資による償却負担を抱えますが、AI技術を安価に使いこなす側の企業は、コスト削減・生産性向上という実利を享受しやすい立場にあります。提供側に集中投資するのではなく、利用側の恩恵を受ける企業にも目を向けることで、リスクを分散できます。
  5. 市場平均に対して出遅れている「優良株」も選択肢に入れる シャルマ氏自身、ROEが高く財務体質が健全で収益が安定した「優良株」が、AIブームの熱狂の中で市場平均を下回るパフォーマンスに留まっていることに着目し、調整局面後に脚光を浴びる可能性がある分野として挙げています。
  6. 全世界株式インデックスの「自動選別」機能を理解しておく オルカンのような時価総額加重型の全世界株式インデックスは、四半期ごとのリバランスで、成長が鈍化した銘柄の比率を自動的に下げ、新しい成長企業を組み入れる仕組みを持っています。個別のAI株を自分で見極める自信がない場合、この「自動選別」の仕組みに任せるという選択肢もあります。

まとめ

バリュエーションより、資金調達の構造を見る

今のAI相場における最大のリスクは、個別企業のバリュエーションの高さそのものよりも、ビッグテックの資金調達構造が「現金」から「負債」へ切り替わっていることにあります。この構造は、金利上昇という一つの引き金によって、複数の悪材料を同時に増幅させる可能性を持っています。中核のAI企業のバリュエーションはドットコムバブル期ほど極端ではないという、落ち着いた分析もある一方で、金利の動向と、ビッグテックの負債関連の指標は、これからも注視し続ける価値があります。

本記事は一般的な情報提供を目的とした分析・整理であり、将来の市場動向を保証するものではなく、特定の投資判断を推奨するものでもありません。記載のデータ・見解は執筆時点(2026年6月29日前後)の報道・専門家の発言等に基づくものであり、その後の市況により変わる可能性があります。投資にあたっては最新の情報を確認の上、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。

AI相場のリスクを徹底解説するシリーズ 2026年6月

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