2026年6月19日、米国とイランがスイスで戦闘終結の覚書に正式署名する見通しとなりました。ホルムズ海峡の段階的開放を受けて原油価格は下落し、東京市場では日経平均株価が最高値圏を更新しています。地政学リスクの後退とAI・半導体セクターの好業績が重なる今、「DRAMなどAI関連株はもう遅いのか」を最新データで検証します。
1米イラン停戦と株式市場の現状
停戦の内容とスケジュール
両国は2026年6月19日にスイスで正式署名を行い、14項目からなる覚書(通称「イスラマバード覚書」)に基づき、署名から30日以内にホルムズ海峡の通航を開戦前水準まで戻す方針です。一方、イランの濃縮ウラン処理や経済制裁緩和といった核心的な論点は、署名後60日以内の最終合意交渉に持ち越されており、楽観しすぎるのは禁物という見方も根強くあります。
日経平均は史上最高値圏
この地政学リスク後退を受け、日経平均株価は2026年6月17日に年初来高値となる70,125円を記録し、その後も69,000円台の高水準で推移しています。野村証券はAI・半導体企業の業績拡大を理由に2026年末の日経平均目標を68,000円(メインシナリオ)、上振れシナリオでは70,500円へと上方修正しており、すでに市場のメインシナリオに近い水準まで先行して上昇している状況です。
2DRAM・AI関連株はまだ「間に合う」のか
需給構造:一時的な特需ではない
DRAM・HBM(広帯域メモリ)市場は、過去の半導体サイクルとは異なる構造変化が起きています。
- SKハイニックス、マイクロンともに2026年分のHBM供給能力はすでに完売
- DRAM契約価格は2026年第2四半期にかけて58〜63%上昇、NANDは70〜75%上昇の見通し
- サムスン電子・SKハイニックスは従来の四半期契約から3〜5年の長期契約(LTA)へ移行し、需要を固定化
- 供給制約は構造的で、メモリ不足の正常化は2027〜2028年ごろとの予測が多い
つまり「AIブームに乗って一時的に値上がりしている」のではなく、需要側(クラウド各社の旺盛なAI投資)と供給側(高度パッケージング技術の制約)の両方が数年単位で構造的に引き締まっている局面です。
バリュエーションでみる「間に合うか」の判断
一方で、バリュエーション(株価の割高・割安度)には注意が必要です。
| 銘柄 | 状況 | バリュエーション目安 |
|---|---|---|
| SKハイニックス | 史上最高値圏、年初来35%超上昇 | 予想PER約18倍(市場推計) |
| マイクロン | DRAM平均販売価格が前期比32%上昇 | 予想PER約8倍 |
| 東京エレクトロン | 上場来高値から調整色 | 目標株価56,082円(6/16時点) |
| アドバンテスト | AI向けテスター需要は強いが見通しは保守的 | 30,650円前後(6/17) |
特に注目したいのは東京エレクトロンです。アナリスト36人以上の目標株価平均は56,082円で、これは現在の株価水準から見てすでに目標を下回って評価されている状態を示しています。「アナリストの目標株価を機械的に上限の目安にする」というアプローチでは、すでに割高感が出ている銘柄もある、ということです。
結論:「間に合うか」への回答
・構造的な需要超過という大きな流れにはまだ乗る余地がある(メモリ不足の正常化は2027〜2028年とされ、向こう1〜2年は強い業績が期待できる)
・ただし個別銘柄ごとに「すでに目標株価に近い、または超えている」ケースがあるため、今からの新規投資は「全力で今すぐ」ではなく、目標株価とのギャップを見ながら段階的にが現実的
・米イラン情勢は60日以内の核問題交渉が難航する可能性もあり、地政学リスクの再燃で短期的な急落が起きる可能性は依然残る
3いくらまで買っていいのか:目標株価から考える目安
具体的な「いくらまで買うか」は個々のリスク許容度次第ですが、目標株価を基準にした考え方を整理します。
まとめると、「いくらまで買っていいか」を一律の数字で示すことはできませんが、各社の直近のアナリスト目標株価を一つの参照点とし、目標株価に対してどの程度の上乗せ(プレミアム)まで許容できるかを自分の中で決めておくことが実践的です。目標株価を大きく超えて取引されている銘柄を「今すぐ全力で」買うのは、相場の地政学リスク再燃や決算でのハードル超え失敗時に大きな下落を被るリスクがあります。
4投資判断の整理
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| AI・DRAM需要の構造性 | 強い(2027〜2028年まで不足継続見通し) |
| 直近のバリュエーション | 一部銘柄で目標株価に接近・超過、過熱感あり |
| 地政学リスク | 停戦は前進だが核問題交渉などで再燃リスクは残る |
| 投資スタイルの目安 | 一括投資より時間分散(ドルコスト平均法的な考え方)が無難 |
5まとめ
米イラン停戦はホルムズ海峡の正常化や原油安につながる好材料ですが、日本株・AI関連株の上昇を支えている本質的な要因はAI・半導体企業の業績そのものの拡大です。DRAM・HBMの需給逼迫は一時的なブームではなく構造的な変化であり、中長期的な投資テーマとしての魅力は失われていません。
一方で、東京エレクトロンのようにすでにアナリスト目標株価に接近・到達している銘柄もあり、「今からでも間に合うか」という問いには「テーマとしては間に合うが、銘柄ごとの目標株価とのギャップを見極めながら、一括ではなく段階的に投資するのが賢明」というのが現時点での実証的な結論です。

