トランプ氏が言及した銘柄を分析
ノキアを徹底分析。
事業内容から目標株価まで
トランプ大統領がペンシルベニア州での演説で取り上げたノキア(NOK)。携帯電話の名門ブランドから、AIインフラ企業への転身を遂げつつあるこの銘柄を、事業内容・業績・目標株価まで整理します。
きっかけ
トランプ大統領の発言
2026年6月23日、トランプ大統領はペンシルベニア州マカンジーのマック・トラックス工場での演説で、地域の製造業投資の一例としてノキアの名前を挙げました。
ノキアは半導体のテスト・パッケージング事業の拡大に3,000万ドルを投資しており、数千人の雇用を生み出している。 — ドナルド・トランプ大統領(2026年6月23日、ペンシルベニア州での演説)
これは、ノキアがペンシルベニア州アレンタウンで進めている半導体テスト・パッケージング拠点の拡張投資(3,000万ドル、500人超の新規雇用、州・連邦の補助金1,400万ドルを含む)を指したものです。この投資は、ノキアが進める40億ドル規模の米国内通信インフラ投資戦略の一部です。発言を受けてノキア株は翌日の取引で1%超上昇しました。
事業内容
携帯電話会社から、AIインフラ企業への転身
かつて携帇電話の世界的ブランドだったノキアは、現在は通信ネットワーク機器・ソフトウェアを手がける企業です。直近の最大の変化は、AI・クラウド向け事業への急速なシフトです。
- ネットワーク基盤事業光ネットワーク・IPネットワーク・固定回線ネットワークから構成。光ネットワーク子会社インフィネラの買収により、世界の光ネットワーク市場で約30%のシェアを持つ業界2位の企業になりました。
- モバイル基盤事業無線アクセスネットワーク機器(Radio Networks)、通信ソフトウェア(Core Software)、技術標準化(Technology Standards)から構成。
- ノキア・テクノロジーズ特許のライセンス事業。長年の研究開発で蓄積した通信関連特許をライセンス供与しています。
- 主要な提携先AWS・グーグルクラウド・データブリックスとAI自律型ネットワークの分野で提携。防衛分野でもKNDSと協業を発表しています。
米カリフォルニア州サンノゼに新設したリン化インジウム(光通信に使う半導体材料)の生産拠点は、2026年内に量産を開始する予定です。ゴールドマン・サックスは、AI関連の光ネットワーク市場が2026年の150億ドルから2028年には1,540億ドルまで拡大すると予測しており、ノキアはこの成長市場における主要プレイヤーの一社として位置づけられています。
業績
2026年第1四半期:AI関連が業績を牽引
| 事業セグメント | 売上高(Q1) | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 光ネットワーク | 8.21億ユーロ | +20% |
| IPネットワーク | 6.26億ユーロ | +3% |
| 固定回線ネットワーク | 3.83億ユーロ | -13% |
| 無線アクセス(Radio) | 15.80億ユーロ | ±0% |
| 通信ソフトウェア | 5.30億ユーロ | +5% |
会社は好調なAI・クラウド需要を受けて通期見通しを上方修正し、ネットワーク基盤事業の2026年成長率予想を「6〜8%」から「12〜14%」へ、光・IPネットワーク事業(合算)の成長率予想を「10〜12%」から「18〜20%」へ、それぞれ引き上げました。一方で、2025年通期では売上高が+3.5%増加した一方、純利益は前年比-49.0%減少しており、AI関連の急成長が始まる前の苦しい時期を経て、今回の転換期を迎えていることが分かります。
株価・目標株価
年初来で2倍超に急騰
株価は年初来で約111%、過去1年では166〜173%上昇しています。直近の目標株価引き上げ(JPモルガン21ドル、ノースランド20ドル、バンク・オブ・アメリカも上方修正)は軒並み現在値を上回っていますが、複数アナリストの平均目標株価は集計サイトによって14〜15ドル程度とまだ控えめな水準にとどまっており、相場の急変化に対してアナリストの目標株価がまだ追いついていない側面もあります。注目したいのは、株価が年初来で2倍超に達した後の5月にも、経営陣・取締役会のメンバーが自社株を買い増したと報じられている点です。
検証
投資妙味をどう見るか
「忘れられた巨人」が、AI時代の静かな建築家になろうとしている。
強気の見方
- 光ネットワーク市場は2026〜2028年で約10倍に拡大すると予測されている
- インフィネラ買収により、垂直統合された光半導体メーカーとしての地位を確立
- AWS・グーグルクラウドなど大手クラウド事業者との提携が加速している
- 経営陣による自社株買いが、株価上昇後も続いている
慎重な見方
- 営業利益率はまだ6%台と、通信機器業界の中でも改善の途上にある
- 固定回線ネットワーク事業は戦略的縮小により売上が減少している
- 無線アクセス事業(最大セグメント)は成長が停滞している
- 2025年通期の純利益は前年比約半減と、業績の回復力はまだ実証段階にある
ノキアの物語は「衰退した通信機器会社の復活」ではなく、「AI需要を取り込む形での事業の再構築」です。光ネットワーク・AI・クラウド関連の成長は本物ですが、会社全体の売上の大部分は依然として従来型の無線・固定回線事業が占めており、転換が完了するまでには時間がかかります。トランプ大統領の発言は、この転換が米国の製造業政策とも合致していることを示す材料の一つですが、それ自体が投資判断の決定打にはなりません。
まとめ
「名前を覚えている会社」への、もう一度の注目
多くの人にとってノキアは「昔の携帯電話の会社」という印象が強いかもしれませんが、現在の事業の中身は大きく変わっています。光ネットワーク・AI・クラウドという成長分野への転換が、業績・株価の両面で実際に進行している点は評価できますが、その転換はまだ会社全体の一部であり、従来事業の停滞も同時に存在しています。トランプ大統領の発言は話題性のあるきっかけですが、投資判断には事業の中身と業績の実態を確認することが欠かせません。
本記事は一般的な情報提供・教育目的の内容であり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。記載のデータは執筆時点(2026年6月25日前後)の各種報道・企業発表・証券会社レポート等に基づくものであり、その後変更される可能性があります。投資にあたっては最新の情報を確認の上、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。
