個別株投資の始め方
EPS成長率は
本物かを見抜く5つの視点
インデックスファンドの積立だけでは物足りなくなってきた人へ。個別株を選ぶ前に見ておきたい指標を、コストコ(良い例)とGE(注意したい例)という2つの実例で解説します。
はじめに
「有名な会社」と「いい会社」は別物
インデックスファンドは数百〜数千社に自動的に分散されているため、1社の決算内容を読み込む必要がありません。個別株では、その「読み込む作業」を自分で担うことになります。ブランドの知名度や話題性だけで判断すると、後から数字を見て驚くことになりかねません。
以下では、5つの指標について、それぞれ「良い例」としてコストコ・ホールセール、「注意したい例」としてかつてのゼネラル・エレクトリック(GE、2017〜2018年当時)を取り上げます。GEは航空機エンジンや発電機器で知られた、ダウ工業株30種平均の創設メンバーでもある名門企業でした。それでも、ここで紹介するような数字のサインが、後から振り返ると業績悪化を先に示していました。
指標1
EPS成長率は「継続性」で見る
1回の好決算ではなく、複数四半期・複数年にわたって増益が続いているかを確認します。
EPSは「1株当たりの利益」なので、増益が続いているかどうかは事業の実力を測る基本指標です。ただし、後述するように、EPSの数字そのものが何によって作られているか(本業の利益か、買収や会計処理の影響か)まで見る必要があります。
指標2
売上の「質」:オーガニックか、M&Aか
売上が伸びていても、その伸びが既存事業の実力によるものか、買収によるものかで意味が変わります。
- コストコ(良い例)既存店売上高(同一店舗の売上)が、ウォルマートなど主要同業他社を上回るペースで伸びている。新規出店ではなく、既存の店舗・会員基盤からの成長であることが分かる。
- GE(注意したい例)ある四半期の売上高成長率は前年比+11%だったが、その主因はベーカー・ヒューズ社の買収(M&A)によるものだった。買収を除いた「本業の力」での成長ではなかった。
売上高や売上高成長率という見出しの数字だけでなく、「既存店売上高」や「オーガニック成長率」など、買収の影響を除いた数字も合わせて確認すると、本業の実力が見えやすくなります。
指標3
フリーキャッシュフローと配当の関係
配当が「実際に稼いだ現金(フリーキャッシュフロー)」の範囲内で支払われているかを確認します。
ここ数年、わが社はフリーキャッシュフローを上回る配当金を支払ってきました。 — ジョン・フラナリーCEO(2017年11月、就任から数ヵ月後の発表)
「配当を出している=健全」とは限りません。GEは長年、本業で稼ぐ現金を上回る配当を払い続けており、それは実質的に借金で配当を払っていたに等しい状態でした。配当の有無だけでなく、「その配当はフリーキャッシュフローで無理なく払えているか」を確認することが重要です。
指標4
利益の「質」:いつキャッシュになるか
帳簿上の利益と、実際の現金収入のタイミングが大きくズレていないかも、見落としやすいポイントです。
GEの発電タービン部門では、タービン本体だけでなく長期の保守サービス契約からも利益を計上していましたが、そのサービス収益の多くは帳簿上のものであり、実際の現金はまだ入ってきていませんでした。さらに、完成品・部品の在庫が積み上がっていたことも、需要を読み誤った結果として後から明らかになりました。表面的な利益は安定して見えても、それが現金として裏付けられているかどうかは別問題です。
指標5
バリュエーションも忘れない
「良い会社」であることと、「今買うのにいい値段か」は別の問題です。
コストコは、安定した会員制モデルと一貫した増収増益を背景に、PER(株価収益率)約50倍という高い評価倍率で取引されています。これは、これまでの実績に裏付けられた「質への対価」と見ることもできますが、同時に「期待がすでに高く織り込まれている」ことも意味します。良い会社であっても、割高な水準で買ってしまえば、その後の株価上昇余地は限られます。逆に、GEのように一時的に「割安」に見える銘柄が、実は財務の悪化を隠していたケースもあるため、安さの理由を確認する姿勢も必要です。
まとめて比較
コストコとGE、5つの指標での違い
| 指標 | コストコ(良い例) | GE(注意したい例) |
|---|---|---|
| EPS成長率 | 複数四半期にわたり前年超えの増益が継続 | 2018年Q3、予想49¢に対し29¢と大幅未達 |
| 売上の質 | 既存店売上高が同業他社を上回るオーガニック成長 | 売上+11%の主因はベーカー・ヒューズ買収(M&A) |
| FCFと配当 | FCFの範囲内で配当を継続、22年連続支払い | FCFを上回る配当を継続→2018年に$0.01まで減配 |
| 利益の質 | 会員費という安定したリカーリング収益が利益を支える | サービス契約の売上を、現金回収より先に計上 |
| バリュエーション | PER約50倍。割高だが実績に裏付けられた評価 | 数字上は「安定」に見えたが、実態は財務の隠れた悪化だった |
まとめ
指標は「儲かる銘柄探し」のためではなく「見落としを減らす」ため
個別株投資は、インデックスファンドが自動的にやってくれていた「分散」と「定期的なチェック」を、自分の手で行うことを意味します。EPS成長率、売上の質、FCFと配当の関係、利益の質、バリュエーション。この5つはどれも単独では完璧な判断材料にはなりませんが、組み合わせて見ることで、表面的な数字に隠れたサインに気づきやすくなります。
本記事で挙げたコストコ・GEの実例は、あくまで指標の使い方を説明するための歴史的な事例であり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。
本記事は一般的な情報提供・教育目的の内容であり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。記載のデータは各社の公開情報・報道等に基づくものですが、最新の状況とは異なる場合があります。個別株投資は本数を絞ることで集中リスクが高まるため、自身のリスク許容度を踏まえ、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。
