マイクロン決算後、半導体相場の熱狂はどこまで続いたか

6/24決算 ▲時間外で最大+16%、純利益は前年比15倍の282億ドル 翌朝の東京市場 ▲日経平均が一時2,700円超上昇 その後 ▼6/26・27と続落、AI投資の持続性への懸念が再燃 前回(3月)決算 ▲好決算でも株価は6営業日で-23.02%という対照的な反応 6/24決算 ▲時間外で最大+16%、純利益は前年比15倍の282億ドル その後 ▼6/26・27と続落、AI投資の持続性への懸念が再燃

続報・2026年6月末

マイクロン決算後、
熱狂はどこまで続いたか

6月24日の決算から数日。半導体相場への波及効果と、その後訪れた失速までを追跡します。

決算直後

「警戒」から「歓迎」への急反転

決算前日(6月23日)、マイクロン株は13.18%安の1,051.77ドルまで急落していました。日経平均も同日2,565円安と急落し、AI関連株への警戒感が市場を支配していました。

決算後の株価 時間外で最大+16% 1,190〜1,213ドル台まで買われ、52週高値(1,255ドル)に迫る場面もあった。
純利益 282億ドル(前年比15倍) 四半期として過去最高。事前予想(235億ドル)を大幅に上回った。
データセンター部門 売上高が前年比7倍 データセンター向けSSD事業も単独で50億ドルを突破。

決算翌朝の東京市場では、日経平均が一時2,700円超上昇するという、決算前日の急落から一夜にして真逆の反応が起きました。

なぜ反応が変わったか

前回(3月)との決定的な違い

実は、前回(2026年3月、FY2026 Q2)の決算も好決算でした。しかし株価は逆に、6営業日で合計-23.02%という急落に見舞われています。

  • 3月の反応売上239億ドル・EPS12.20ドルと予想を大幅に上回ったが、設備投資見通し(250億ドル超)が市場予想(224億ドル)を超えたことが嫌気され、株価は急落。日本の半導体株(アドバンテスト、キオクシア等)も連れ安した。
  • 6月の反応同じく設備投資負担は重いままだが、「戦略的顧客契約(SCA)」という新しい仕組みが、その投資を正当化する材料として評価された。

SCAは、データセンター・コンシューマー・車載の顧客と結んだ、原則5年(車載3年)の長期契約です。「買わなくても代金を払う」テイク・オア・ペイ構造で、価格にも下限(フロア)が設定されており、フロア価格でも過去のどのサイクルのピークマージンをも上回る利益率が確保される仕組みになっています。16件中14件で、契約期間の最低保証売上は累計約1,000億ドルに達し、CEOのサンジェイ・メロトラ氏は「SCAが完了すれば、会社売上の半分以上がこの枠組みに入る」との見通しを示しました。同じ「設備投資の重さ」という事実が、3月は「リスク」として、6月は「投資の正当化」として、まったく逆の評価を受けたことになります。

波及効果

誰に恩恵が連鎖したか

285A

キオクシア

マイクロンが「NAND単価が前期比8割超上昇」と示したことが直接のシグナルとなり、決算翌朝に一時+14.75%まで急騰。

6857

アドバンテスト

HBMの検査工程で恩恵を受けるとして連想買い。マイクロン自身のFY2026設備投資(約270億ドル)の波及先として名前が挙がる。

8035

東京エレクトロン

同じく設備投資拡大の波及先。半導体製造装置セクター全体への連想買いが入った。

SKハイニックス/サムスン

韓国メモリ大手2社

マイクロンが市況の強さを数字で証明したことで、直前まで売られていた韓国メモリ株への懸念も後退した。

HBM(広帯域メモリ)については、マイクロンのHBM4(12段品)が量産ランプ中で、立ち上がり速度はHBM3Eの2倍。HBM4だけで既に10億ドル超の売上に達しています。SKハイニックス・サムスンとの三つ巴の覇権争いは、NVIDIAのGPU出荷量を実質的に律速する変数として、引き続き注視されています。

その後

しかし、数日で熱狂はしぼんだ

決算直後の興奮は、長くは続きませんでした。

  • 6月26日巨大テック7社株が総崩れとなり、ダウは反落、ナスダックも続落。AI投資の不透明感が再び意識された。
  • 6月27日ダウは反落、AI・半導体銘柄に売りが続いた。原油安で下値は限定的だったものの、上昇分の多くが失われた。
  • 6月28日時点マイクロン株は1,132.33ドルまで値を落としており、決算直後のピーク(1,213.56ドル)から約7%下落している。

この失速は、これまでお伝えしてきた「ハイパースケーラーの設備投資はフリーキャッシュフローの限界に近づいている」「AI収益化はまだ初期段階」という、より大きなテーマへの懸念が、マイクロン1社の好決算では払拭しきれなかったことを示しています。マイクロンのSCAは、メモリという特定の製品における需給構造を改善するものですが、AI投資全体の収益性という、より大きな問いには答えていません。

視点

今回の決算から持ち越された論点

メモリ株は、好決算でも「材料出尽くし」で売られることが珍しくない。今回はその警戒を吹き飛ばすだけの上振れ幅があった。 — 個人投資家ブログの分析より要約

なお強気でいられる材料

  • SCAによる収益の予見性向上は、メモリ特有の「乱高下するコモディティ」という弱点を構造的に緩和する変化
  • DRAM・NANDともに2027年以降も需給逼迫が続くと経営陣が明言
  • HBM4の量産立ち上がりが、前世代より速いペースで進んでいる
  • 第4四半期ガイダンス(売上500億ドル、EPS31ドル)も市場予想を上回る強気の内容

持ち越されたままの懸念

  • 各社が競って設備投資を急増させており、数年後に生産能力が過剰となるリスクは常に内包されている
  • ハイパースケーラー全体のフリーキャッシュフロー悪化という、より大きなテーマは未解決
  • 年初来+270%前後という株価上昇による高値警戒感
  • キオクシアも「急成長下でも投資アクセル半踏み」と報じられるなど、過去の市況悪化の記憶が業界に根強く残っている

まとめ

個社の決算では、業界全体の問いには答えられない

マイクロンの決算は、メモリという個別製品の需給構造において、文句のつけようのない結果でした。SCAという仕組みは、業界の宿命だった価格の乱高下を和らげる、本質的な変化です。しかし株価がわずか数日で上昇分の多くを失ったことは、「AI投資全体がいつ収益になるのか」というより大きな問いが、1社の好決算では解決しないことを示しています。短期的な値動きに一喜一憂せず、次の四半期でSCAがどこまで実際の業績に反映されるかを、引き続き確認していく必要があります。

本記事は一般的な情報提供を目的とした分析・整理であり、将来の株価動向を保証するものではなく、特定の投資判断を推奨するものでもありません。記載のデータは執筆時点(2026年6月28日前後)の報道に基づくものであり、その後の市況により変わる可能性があります。投資にあたっては最新の情報を確認の上、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。

マイクロン決算続報・2026年6月末

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