投資の基礎を事細かく
投資信託とETF、
起源から見る違いと使い分け
同じ「S&P500」に投資するのに、なぜ投資信託とETFという2つの選択肢があるのか。その起源、仕組みの違い、そして実際にどちらを使うべきかまでを事細かく整理します。
起源①
投資信託の起源:1868年・英国
投資信託の起源は、19世紀の英国にあります。さらに遡ると、その発想の原型は中世の十字軍遠征時代の「ユース」という財産管理の仕組みにあるとも言われています。
- 1868年英国で「海外植民地投信(Foreign & Colonial Government Trust)」が設立。目論見書には「中流階級の投資家にも、大資本家と同様の利益を享受できるようにする」と記され、当時は大資本家しかできなかった海外投資を、少額からでも参加できるようにすることを目指しました。
- 1876〜1907年スエズ運河買収後の利払不履行(1876年)やベアリング恐慌(1890年)、1907年恐慌など、海外証券中心の運用は度々打撃を受けました。
- 1937年日本初の投資信託に近い存在として、藤本ビルブローカー(現・大和証券)が「藤本有価証券投資組合」を設立。ただし信託関係が制度的に明示されておらず、3年で募集中止に。
- 1951年6月「証券投資信託法」が施行され、日本の投資信託が本格的に始動。野村・日興・山一・大和の4社が登録第一号となりました。
- 1961年株式投信に続き、公社債投信(債券中心のファンド)も登場し、投資対象が広がりました。
起源②
ETFの起源:1990年・カナダ
ETFの起源は、投資信託よりはるかに新しく、「個別株」と「投資信託」という2つの巨大な市場の狭間から生まれました。
- 1989年株価指数先物を個人投資家にも使いやすくした「IPS(Index Participation Shares)」が複数の取引所で取引開始。人気を集めましたが、最終的に先物とみなされ上場廃止になりました。
- 1990年3月カナダ・トロント証券取引所に「TIPS35(Toronto 35 Index Participation units)」が上場。世界初のETFとされています。
- 1993年1月22日米国アメリカン証券取引所(AMEX)に「SPDR S&P500 ETF Trust(SPY)」が上場。ステート・ストリートとAMEXが3年かけて準備したプロジェクトでした。当初は資産の伸びが鈍かったものの、オンライン取引の普及とともに個人投資家に広まりました。
- 1995年5月日本初のETF「日経300株価指数連動型上場投資信託」が、野村證券投資信託委託(現・野村アセットマネジメント)により全国8証券取引所に同時上場。法整備が未完成だったため、特例的な存在でした。
- 2001年7月法改正を受けて東京証券取引所がETF市場を創設。TOPIX・日経225に連動するETFが上場し、日本のETF市場が本格的に始動しました。
- 2000年代2000年に「iシェアーズ」が一挙に十数本のETFを投入し、商品ラインナップが多様化。2007年の規制緩和で海外指数・コモディティ等への対象拡大も進みました。
SPYは2024年、ETFとして初めて純資産総額5,000億ドルを突破し、現在も世界で最も売買高の多いETFです。投資信託が「少額からの分散投資」を実現した発明であったのに対し、ETFは「分散投資に、株式と同じ取引の自由度を持たせた」発明だったと言えます。
仕組み
何がどう違うのか:3つの本質的な違い
①価格が決まるタイミング
投資信託は、1日に1回算出される基準価額で売買されます。注文を出した時刻によって、その日の基準価額になるか翌営業日の基準価額になるかが決まり、取引中の値動きを見ながら売買することはできません。ETFは取引所で株式と同じように取引されるため、取引時間中はリアルタイムで価格が変動し、見ている値段でそのまま売買できます。
②お金の出入りの仕組み
投資信託は、投資家が解約する際、運用会社が裏付けとなる株式等を「現金化」して資金を返す必要が生じることがあります。一方ETFは、指定参加者(証券会社等)が、ETFの株式(受益証券)と、裏付けとなる現物資産のバスケットを直接交換する「creation/redemption」という仕組みを使います。現金化を介さずに済むこの仕組みが、ETFの構造的な特徴です。
③口数・株数の単位
投資信託は100円・1,000円など、金額を指定して少額から自由に購入できます。ETFは「1株」「10株」など、株数単位での購入が基本となり、購入金額はその時の株価×株数で決まります(一部の証券会社では単元未満株での購入に対応する場合もあります)。
実務上の違い
一覧表で比較する
| 項目 | 投資信託 | ETF |
|---|---|---|
| 取引価格 | 1日1回の基準価額 | 取引時間中リアルタイムで変動 |
| 最低投資額 | 100円〜と少額から可能 | 1株単位(株価により数千〜数万円) |
| 自動積立 | 金額指定で柔軟に設定可能 | 対応している証券会社は限定的 |
| 分配金 | 自動再投資コースを選べる場合が多い | 原則、現金で受け取り(再投資は手動) |
| NISAつみたて投資枠 | 対象商品が豊富 | 対象商品は限定的 |
| 購入時コスト | ノーロード(無料)の商品が多い | 取引手数料(無料化が進む証券会社もある) |
| 取引の自由度 | 制限あり(1日1回の約定) | limit注文・信用取引等が可能 |
結論
同じ投資先なら、どちらを使うべきか
例えば「S&P500に投資したい」という同じ目的でも、米国上場ETFの「VOO」と、投資信託の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」という2つの選択肢があります。経費率はVOOが0.03%、eMAXIS Slimが0.09372%と、現在はその差もごくわずかです。
投資信託が向いている人
- NISAのつみたて投資枠を使って、毎月コツコツ積み立てたい
- 分配金を自動で再投資し、複利効果をそのまま活かしたい
- 毎月1万円など、株価に関係なく決まった金額で積み立てたい
- 取引のタイミングを気にせず、シンプルに「持ち続ける」運用をしたい
ETFが向いている人
- まとまった資金を、希望するタイミング・価格で一括投資したい
- 日本の投資信託にはない、特定のニッチな指数・テーマに投資したい
- 取引時間中の値動きを見ながら、限定価格で売買したい
- 信用取引や、株式と同様の取引手法を使いたい
多くの日本の個人投資家、特にNISAを使った長期の積立投資が目的であれば、自動積立・自動再投資の利便性から投資信託の方が扱いやすいケースが多くなります。一方で、まとまった資金の一括投資や、コスト・取引の自由度を重視するなら、ETFという選択肢も十分に検討に値します。「どちらが優れているか」ではなく、「自分の投資スタイルに、どちらの仕組みが合っているか」で選ぶのが、実務上もっとも合理的な考え方です。
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※ 取扱商品・NISA対応状況は証券会社により異なります
まとめ
同じ「分散投資」を、別の仕組みで実現した2つの発明
投資信託は1868年の英国で、「少額からでも大資本家と同じ機会を」という思想から生まれました。ETFは1990年前後に、「個別株の自由度」と「投資信託の分散効果」を組み合わせる形で生まれました。同じ分散投資という目的に対して、異なる時代に異なる仕組みで応えた2つの発明だと考えると、両者の違いが理解しやすくなります。
本記事は一般的な情報提供・教育目的の内容であり、特定の銘柄・ファンドの購入・売却を推奨するものではありません。記載の歴史的経緯・データは各種公開情報に基づくものであり、年代や経緯には複数の説が存在する場合があります。投資にあたっては各商品の目論見書を確認の上、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。
