SPCX・長期目線の検証
スペースX株、
初値付近まで下落した今は買いか
上場来高値から約31%下落し、初値近辺まで値を落としたスペースX(SPCX)。マスク氏の長期ビジョンを踏まえつつ、ポートフォリオの何%まで持つのが妥当かを検証します。
現状
上場から2週間で、ジェットコースターのような値動き
SPCX 株価の推移(終値・主要時点)
公開価格 6/12
初値 6/16
上場来高値 6/23
直近安値 6/25
現在値
6月12日に135ドルで上場し、わずか4日後の6月16日には225.64ドル(時価総額2.7兆ドル超)まで急騰。しかしその後3営業日で時価総額の約6,000億ドルが失われ、6月23日には初値の150ドルを一時下回る147.11ドルまで下落しました。現在は154.54ドル前後で推移しており、公開価格(135ドル)からは+14%程度、初値(150ドル)からはわずか+3%程度という水準です。
下落の理由
パニックと、その後の巻き戻し
- 初の社債発行200億〜250億ドル規模の投資適格社債発行を発表したことで、当初は「資金不足ではないか」という懸念から株価が急落しました。
- 需給の検証しかし実際の社債募集では、需要が想定の4倍超となる890億ドルに達し、発行スプレッドも縮小。資金繰り懸念は払拭され、株価は1日で7%超反発する場面もありました。
- 半導体・AI株安の連れ安韓国市場の急落やマイクロンの急落(前週)など、AI関連株全体が軟調だった時期と重なったことも、下落を増幅させました。
- 浮動株の少なさ公開された株式は全体の5%未満と極めて少なく、わずかな売買でも値動きが大きくなりやすい構造になっています。
注意点
9月までに、株式の供給が急増する可能性
長期目線で判断する上で、最も重要なのはロックアップ(売却制限)の解除スケジュールです。
通常のIPOで一般的な180日間の一律ロックアップとは異なり、スペースXは2027年まで続く15段階の段階的解除という、独自の複雑なスケジュールを採用しています。短期的には、この大量の供給が株価の重荷になりやすい時期が続くと考えられます。
バリュエーション
強気派と慎重派の評価が大きく分かれている
売上高に対する評価倍率(PSR)は、2026年予想で約67倍、2027年予想でも約36倍と、高い成長を前提にしても割高な水準です。学術的な評価モデルでは現在の株価を下回る公正価値が示される一方、株式アナリストの目標株価は依然として現在値を上回っています。この「評価モデルとアナリスト目線のギャップ」自体が、この銘柄の評価が定まっていないことを示しています。
長期ビジョン
イーロン・マスク氏が見ている未来
短期的な株価の混乱とは別に、長期目線で判断するなら、マスク氏が掲げる事業の全体像を理解しておく価値があります。
- 火星移住計画スペースXの根幹にある創業時からの目標は、人類を「多惑星種」にすることです。Starshipは、この火星移住計画とNASAの月面探査計画(アルテミス計画)の両方を支える次世代ロケットとして開発されています。
- スターリンクの拡大現在の主力事業である衛星インターネット「Starlink」は、軌道上の衛星網を通じて世界中に通信を提供しており、今後も契約者数・売上の拡大が見込まれています。
- xAIとの統合2026年2月にxAI(Grok開発企業)との統合を完了。宇宙インフラとAIを組み合わせ、軌道上でのデータセンター運営など、従来の宇宙企業の枠を超えた事業展開を構想しています。
- 巨額投資という両刃の剣ゴールドマン・サックスやエバーコアISIは、2031年までの設備投資が1兆ドルを超えると予測しており、これは長期ビジョンの実現に向けた投資であると同時に、財務面でのリスク要因でもあります。
火星への道は、四半期ごとの決算という現実を経由する。長期ビジョンの大きさと、短期の財務リスクは、同じコインの両面である。
検証
長期目線で見て、今は買いか
買いを支持する材料
- 社債発行が4倍超の応募を集め、資金繰り懸念は実態として払拭された
- 打上げ・Starlink・Starship・AI(xAI)という、他に類を見ない事業の組み合わせ
- アナリストの目標株価平均は、現在値より約2割高い水準を維持している
- 株価は既に上場来高値から3割下落しており、短期的な過熱感はある程度解消されている
慎重になるべき材料
- モーニングスターの公正価値は現在の時価総額の半分以下
- 9月初旬までに浮動株が大幅に拡大し、供給増が株価の重荷になりやすい
- 2030年まで実質的な収益化(フリーキャッシュフローの黒字化)は見込みにくいとの予測がある
- 上場からまだ2週間程度で、四半期決算という「実績」の蓄積がほとんどない
ポートフォリオ配分
何%まで持つのが妥当か
個別の銘柄、特に上場直後で実績の少ない高ボラティリティ株は、ポートフォリオ全体の「サテライト(衛星)」部分として、限定的な比率で持つのが一般的な考え方です。
一般的な「コア・サテライト」型ポートフォリオの考え方
スペースXのような銘柄は、①浮動株が極端に少なく値動きが激しい、②今後数ヶ月で株式の供給が大幅に増える可能性がある、③上場後の実績がまだほとんどない、という3つの理由から、一般的な個別株よりもさらにリスクが高いと考えられます。多くのファイナンシャルプランナーが個別の高リスク銘柄に推奨する目安(おおむね5〜10%以内)よりもさらに抑えて、ポートフォリオ全体の1〜3%程度を上限とし、「最悪の場合はゼロになっても、全体の資産形成計画に大きな影響が出ない金額」を基準に考えるのが、長期目線では妥当な範囲と言えます。
まとめ
夢の大きさと、財布の大きさは別問題
スペースXが描く長期ビジョン(火星移住、Starlink、AIとの統合)は壮大ですが、現在の株価には既に高い期待が織り込まれており、評価モデルによっては公正価値を上回っているとの見方もあります。さらに、今後数ヶ月は株式供給の増加という構造的な逆風も控えています。「夢に投資する」ことと「ポートフォリオ全体のリスクを管理する」ことは両立できますが、そのためには持つ比率を意図的に小さく抑えることが重要です。
本記事は一般的な情報提供・教育目的の内容であり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。記載のデータは執筆時点(2026年6月25日前後)の報道・証券会社レポート等に基づく概況であり、株価は急速に変動する可能性があります。ポートフォリオにおける配分比率は一般的な考え方を示したものであり、個々の資産状況・リスク許容度により適切な比率は異なります。投資にあたっては最新の情報を確認の上、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。
