マイクロン決算を総括。戦略的顧客契約の意味と目標株価、買い増しの是非

売上高 ▲414.6億ドル(コンセンサス約345〜358億ドルを大幅超過) 非GAAP EPS ▲25.11ドル(コンセンサス約19.7〜20.8ドル) 粗利益率 ▲84.9%(前四半期74.9%・前年同期39.0%) Q4ガイダンス ▲売上高500億ドル±10億ドル、EPS31.00ドル±1ドル 時間外取引 ▲決算発表後に株価12〜15%上昇 前日(6/23) ▼韓国メモリ株急落の連れ安で株価12%超下落していた 売上高 ▲414.6億ドル(コンセンサス約345〜358億ドルを大幅超過) 非GAAP EPS ▲25.11ドル(コンセンサス約19.7〜20.8ドル)

決算分析・2026年6月24日発表

マイクロン決算を総括。
戦略的顧客契約という新事実

2026年度第3四半期決算は、コンセンサスを大幅に上回る「歴代最高」の内容でした。良かった点・懸念点・経営陣の発言を整理し、目標株価とMUの買い増しの是非を検証します。

総括

数字で見る「歴代最高」決算

2026年5月28日締めの第3四半期は、前四半期・前年同期と比べて全ての主要指標が跳ね上がりました。

売上高 414.6億ドル 前四半期238.6億ドル(+73.7%)、前年同期93.0億ドル(+345.7%)。コンセンサス(約345〜358億ドル)を大幅に超過。
非GAAP EPS 25.11ドル 前四半期12.20ドル、前年同期1.91ドル。コンセンサス(約19.7〜20.8ドル)を大幅に超過。
粗利益率 84.9% 前四半期74.9%、前年同期39.0%から急拡大。会社のQ4ガイダンスは約86%を見込む。

会社のQ3ガイダンス(335億ドル±7.5億ドル、非GAAP EPS19.15ドル±0.40ドル)自体も市場予想に近い数字でしたが、実際の結果はそのガイダンスすら大きく上回りました。さらにQ4ガイダンス(売上高500億ドル±10億ドル、非GAAP EPS31.00ドル±1ドル)も、市場予想(売上高約436億ドル、EPS約24.8ドル)を再び大幅に上回る内容です。

セグメント別

AI関連だけでなく、全事業で改善

特に注目したいのは、データセンター以外の事業も含めて、4つの事業すべてで利益率が劇的に改善している点です。

事業セグメント売上高(Q3)営業利益率(Q3)営業利益率(前年同期)
クラウドメモリ137.7億ドル78%46%
コアデータセンター115.2億ドル83%20%
モバイル・クライアント115.2億ドル86%15%
自動車・組み込み46.3億ドル75%11%

コアデータセンター事業は前年同期比で売上高が約7.5倍、営業利益率は20%から83%まで拡大しました。一方で、AIとは直接関係の薄い自動車・組み込み事業も営業利益率が11%から75%まで改善しており、これはメモリ市場全体の価格環境が、AI需要だけでなく構造的に逼迫していることを示しています。

良かった点

最大のポイントは「戦略的顧客契約」

今回の決算で最も重要なのは、業績の数字そのものよりも、経営陣が明らかにした新しい契約の枠組みです。

  • 戦略的顧客契約データセンター事業者や自動車メーカーなど顧客16社と、3〜5年にわたる長期契約を締結。購入量を確約する拘束力のある契約で、契約総額(financial commitments)は220億ドルに達します。
  • 収益の安定化CEOのサンジェイ・メロトラ氏は、これらの契約が完了すれば、会社全体の売上高の半分以上をこの仕組みでカバーできるようになる、としています。
  • HBM4の量産1-betaプロセスを採用したHBM4は、主要顧客向けプラットフォームで既に量産出荷段階に入っており、複数の他顧客にも評価用サンプルを出荷済みです。
  • 財務基盤四半期の調整後フリーキャッシュフローは183億ドル。長期債務を前四半期の95.6億ドルから51.4億ドルまで圧縮するなど、稼いだ現金で借金を急速に減らしています。
これは良いことだ。 — マーク・マーフィーCFO(戦略的顧客契約について)

CEOは決算発表文の中で、この複数年契約が会社の業績の「持続性と予見可能性」を大きく高めると述べています。これまでメモリ半導体株の最大の弱点とされてきた「業績の急激な変動」そのものを、契約構造によって和らげようとする動きであり、今回の決算で最も評価すべき変化と言えます。

懸念点

それでも残るリスク

  • 受取勘定の急増受取勘定(売掛金)は2025年8月末の92.6億ドルから今四半期末には310.2億ドルまで拡大。売上高の伸び(+73.7%)をやや上回るペースであり、回収状況は今後も確認したい点です。
  • 設備投資の加速四半期の純設備投資額は71億ドル(前四半期は50億ドル)。2026年度の設備投資は250億ドル超を予定し、2027年度はさらに増加する見通しです。
  • 「ピークが天井」論ゴールドマン・サックスは目標株価を400ドル前後と、他の主要アナリストと一線を画す慎重な立場を取っています。現在の84%超という粗利益率は「天井であって底ではない」とし、各社が同時に増産投資を行っていることが、将来的な価格下落の引き金になり得ると指摘しています。
  • 契約の実効性は未知数戦略的顧客契約は今回初めて明らかになった枠組みであり、実際の景気後退局面でどこまで履行されるかは、まだ証明されていません。

目標株価

アナリストの目標株価は広く分散

マイクロン(MU)アナリスト目標株価の分布(決算前後の動き)

$400ゴールドマン・サックス(慎重)
$1,023決算前の目標株価平均(43名)
約$1,200決算発表後・時間外の株価水準
$1,625UBS(強気)

決算直前の1週間には、UBSが535ドルから1,625ドルへ、バンク・オブ・アメリカが1,500ドルへ、RBCキャピタルが525ドルから1,200ドルへと、複数の主要アナリストが目標株価を大幅に引き上げていました。一方でゴールドマン・サックスは400ドル前後という慎重な見方を維持しており、目標株価の分散の大きさそのものが、この銘柄に対する市場の評価がまだ一つに収束していないことを物語っています。今回の決算を受けて、多くのアナリストがさらなる上方修正に動く可能性があります。

なお、決算の2日前(6月22日)には、AI開発企業アンソロピックとの戦略的提携も発表されています。メモリ・ストレージのアーキテクチャ設計協力、複数年の供給契約、さらにアンソロピックのシリーズH資金調達ラウンドへの出資という3つの要素を含む内容で、戦略的顧客契約の枠組みが、ハイパースケーラーだけでなくAI開発企業にも広がっていることを示す材料です。

算出

妥当な株価を算出してみる

今回のEPS上振れ分をもとに、PER(株価収益率)を使って妥当な株価帯を逆算してみます。

決算前のFY2026通期EPSコンセンサスは58.79ドル(Q3予想20.28ドル・Q4予想24.80ドルを含む)でした。今回、Q3実績が25.11ドル(予想を+4.83ドル上回る)、Q4ガイダンス中央値が31.00ドル(予想を+6.20ドル上回る)となったため、この上振れ分をそのまま反映すると、FY2026のEPSは推定69.82ドル程度まで上方修正される計算になります。

PER倍率の前提FY26EPS(69.82ドル)基準FY27EPS(102.26ドル)基準
控えめ(循環株として評価)10倍 → $6988倍 → $818
中間15倍 → $1,04710倍 → $1,023
やや強気(成長株として再評価)18倍 → $1,25712倍 → $1,227
強気(NVIDIA的な評価を適用)20倍 → $1,39614倍 → $1,432

中間〜やや強気のレンジで、$1,000〜$1,300程度に収まります。これは、決算後に複数の主要アナリストが示している目標株価($1,050〜$1,625、平均は集計サイトにより$1,000〜$1,300程度)とも、おおむね整合する結果です。唯一の例外であるゴールドマン・サックスの400ドル前後という目標は、PER倍率の問題ではなく「この高いEPS自体が持続せず、循環的に正常化する」という、前提となるEPSそのものが異なる慎重な見方によるものです。

「妥当な株価」のブレの大部分は、PER倍率の前提よりも、この高い利益率がどこまで続くと信じるかという1点に集約される。

総合すると、妥当な株価帯はおよそ$1,000〜$1,300程度(中心値は$1,100〜1,200付近)という計算になります。決算直後の時間外取引では、報道によって幅はあるものの株価が$1,100〜1,200付近まで上昇したとされており、市場は今のところこの「中間〜やや強気」シナリオに近い評価を下していると言えます。

検証

MUの買い増し・DRAM投資の是非

戦略的顧客契約は「サイクル株」を「契約に支えられた成長株」に変えうる材料だが、まだ1四半期分の実績しかない。

買い増しを支持する材料

  • 戦略的顧客契約により、売上の半分以上が複数年の確約に支えられる見通し
  • AI関連だけでなく、自動車・組み込みを含む全事業で利益率が改善
  • 2026年のHBM供給は完売、DRAM需給はゴールドマンの試算でも「15年で最も深刻な不足」
  • FY2027の市場予想EPSをもとにすると、現在の株価でも予想PERは10倍程度と、増益ペースに対して相対的に低い

慎重になるべき材料

  • 84.9%という粗利益率は歴史的に見て持続しにくい高水準
  • 各メモリメーカーが同時に増産投資を行っており、供給過剰への反転リスクは消えていない
  • 戦略的顧客契約は新しい枠組みで、不況時にどこまで機能するか未検証
  • 株価は決算前から1年で約700〜750%上昇しており、好材料の多くは既に織り込まれている可能性がある

DRAMへの投資という観点では、今回の決算は「単発の好決算」ではなく「契約構造の変化」を伴っている点が、過去の半導体メモリのサイクルとは異なります。とはいえ、この契約構造が本当に業績の波を平らにするのかは、次の下降局面を経験するまで証明されません。買い増しを検討する場合は、急騰後の高いボラティリティ(決算前日には韓国メモリ株急落の連れ安で12%超下落する場面もありました)を踏まえ、一度に大きな金額を投じるのではなく、時間を分けて判断することも一案です。

まとめ

「歴代最高」の先にある、次の問い

今回の決算は、業績の規模だけでなく、戦略的顧客契約という新しい収益構造を伴っていた点で、過去のマイクロンの決算とは性質が異なります。これが本当に「メモリの宿命」とされてきた急激な業績変動を和らげるのか、それとも歴史が繰り返すのか。次の四半期以降、特に下降局面が訪れた際にこの契約がどう機能するかが、最大の検証ポイントになります。

本記事は一般的な情報提供・教育目的の内容であり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。記載のデータは2026年6月24日の決算発表内容および直後の報道に基づくものであり、株価は決算後の時間外取引における変動を含むため、その後の通常取引で変わる可能性があります。投資判断にあたっては、最新の株価・アナリストレポートをご確認の上、必要に応じて金融の専門家にもご相談ください。

マイクロン2026年度第3四半期決算分析

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