民主党が上下両院を制した米中間選挙
民主党政権とトランプ政権、株価はどちらで上がったのか
選挙翌日、ダウ平均は1,500ドルを超える上昇。では、これからの2年間はどうなるのか。歴代政権の株価データを比べると、「どの党が勝つと株が上がるか」という問いの答えは、数字の取り方ひとつで逆転することが分かります。
2026年11月3日に行われた米国の中間選挙で、民主党が上院・下院の両方で多数派を獲得しました。CNNなど複数の米メディアは、選挙翌日の4日にダウ平均が中間選挙の翌日としては1982年以来の大きな上昇を記録したと報じています。
この記事では、「民主党と共和党、どちらの時代に株は上がったのか」を、トランプ政権(1期目・2期目)と民主党政権(オバマ・バイデン)の比較を中心に整理します。そのうえで、これからの2年間の米国株を考えるうえで本当に見るべきポイントを、忖度なしでまとめます。
中間選挙は議会の選挙で、大統領は変わりません。トランプ大統領の任期は2029年1月まで続きます。民主党が議会の多数派になるのは2027年1月からで、「共和党の大統領+民主党の議会」という、いわゆる「ねじれ」(分割政府)の状態になります。この記事では、歴代の民主党政権との比較に加えて、この「ねじれ」の組み合わせで株がどう動いてきたかも検証します。
1.選挙結果と市場の初動
報道によると、民主党は上院で共和党から7議席を奪い、下院でも多数派を獲得しました。CBSニュースは、下院での民主党の勝利により、トランプ大統領は残り2年間の任期で、立法による政策の実現が事実上止められることになると伝えています。
2026年最大の上げ幅
1982年以降で2番目
上昇幅
出典:2026年11月4日の米国市場(米ヤフー・ファイナンス、CNN報道)
上昇の理由として報じられたのは、主に二つです。一つは、選挙結果がはっきりし、トランプ大統領が結果を受け入れる姿勢を示したことで不確実性が消えたこと。もう一つは、「ねじれ」によって政策が膠着し、過度な財政支出が抑えられるとの見方です。財政悪化への懸念が和らいだことで米国債が買われ、利回りは低下しました。
一方で、選挙前には、民主党が両院を制した場合、AIのインフラ投資に関連する銘柄などに逆風になり得るとの懸念も市場にありました。この点は後で詳しく触れます。
2.大統領の政党で比べると:答えは「数字の取り方次第」
まず、「民主党の大統領と共和党の大統領、どちらの時代に株は上がったのか」という定番の問いです。結論から言うと、平均で見ると民主党、中央値で見ると共和党が上回るケースもあり、計算方法で答えが逆転します。
| 集計方法 | 期間 | 民主党の大統領 | 共和党の大統領 |
|---|---|---|---|
| 年間リターンの平均 | 1926〜2023年 | 14.8% | 9.3% |
| 年間リターンの中央値 | 1957年以降 | 12.9% | 9.9% |
| 任期中の年率リターン(全体) | 1957年以降 | 9.8% | 6.0% |
| 任期中の年率リターン(中央値) | 1957年以降 | 9.4% | 10.2% |
出典:WT Wealth Management(1926〜2023年、平均)、米モトリーフール(1957年以降、YChartsのデータ、配当を含まない株価ベース)
平均値は、大恐慌やリーマン・ショックのような極端な年に大きく引っ張られます。中央値で見ると、両党の差は小さくなり、一部の指標では共和党が上回ります。米ゴールドマン・サックスのアナリストは、どちらか一方の党の大統領のときだけS&P500に投資していた場合、政党に関係なく投資し続けた場合と比べて大きく見劣りしていたと結論づけています。
3.直近の政権比較:オバマ・トランプ・バイデン
4年間の通算リターン
| 政権 | 期間 | S&P500の通算リターン(配当込み) | 主な出来事 |
|---|---|---|---|
| トランプ1期目(共和党) | 2017〜2020年 | +81.3% | 大型減税、米中貿易戦争、コロナ・ショック |
| バイデン(民主党) | 2021〜2024年 | +66.3% | インフレと急速な利上げ、生成AIブーム |
| トランプ2期目(共和党) | 2024年11月5日の選挙〜2026年10月20日 | 約+39%(途中経過) | 関税ショック、イランとの戦争、AI相場 |
出典:U.S. Bank(配当込みのトータルリターン)。トランプ2期目は大統領選挙日からの数値で、任期の途中経過です。
就任から20カ月時点の比較
任期の長さをそろえるため、就任から同じ20カ月の時点で比べたのが次の表です。
| 政権 | S&P500 | ナスダック総合 |
|---|---|---|
| オバマ(民主党) | +32.4% | +51.4% |
| トランプ1期目(共和党) | +28.5% | +43.5% |
| トランプ2期目(共和党) | +27.6% | +35.1% |
| バイデン(民主党) | +2.7% | -12.6% |
出典:米Axios(Financial Modeling Prepのデータ、就任直前の取引日の終値からの株価の変化率)
この比較から分かるのは、同じ民主党政権でも、オバマ政権は最も高く、バイデン政権は最も低いということです。バイデン政権の20カ月目(2022年9月)は、40年ぶりの高インフレを抑えるための急速な利上げで株価が大きく下げていた時期でした。逆にオバマ政権の起点は、リーマン・ショック後の株価の底に近い2009年1月です。株価を最も左右したのは政党ではなく、就任時の株価水準と、金利・景気の局面だったと言えます。
トランプ2期目の最初の1年間のS&P500の上昇率は13.3%で、新しい任期の1年目としては2005年以来の低さでした。2025年4月には関税への不安から年初来で約17%下落し、恐怖指数(VIX)がコロナ・ショック以来初めて50を超えました。その後は関税の一時停止や撤回を受けて回復し、2026年2月には最高値を更新しています。
4.本題:「共和党の大統領+民主党の議会」は歴史的に最も弱い?
今回の結果で最も気になるのがこのデータです。大統領と議会の組み合わせ別にS&P500の平均リターンを見ると、今回と同じ「共和党の大統領+民主党(または分裂した)議会」の組み合わせが、最も低いという結果が出ています。
| 大統領と議会の組み合わせ | 年数 | S&P500の年間平均リターン |
|---|---|---|
| 民主党の大統領+ねじれ | 15年 | 16.63% |
| 共和党が大統領と議会を独占 | 13年 | 14.52% |
| 民主党が大統領と議会を独占 | 36年 | 14.01% |
| 共和党の大統領+ねじれ(今回) | 34年 | 7.33% |
出典:Retirement Researcher(1926〜2023年)。別の集計(RBCキャピタル・マーケッツ、1932年以降)でも、共和党の大統領と民主党の議会の組み合わせは年平均約5%と、6通りの組み合わせの中で最も低い結果です。
忖度なしで中身を見る:弱い年には「危機」が重なっている
この数字だけを見ると、「これから2年間は株が上がりにくい」と思いたくなります。しかし、この組み合わせだった時期を振り返ると、大きな危機と重なっていることに気づきます。
| 時期 | 大統領 | 同じ時期に起きたこと | S&P500(株価) |
|---|---|---|---|
| 1931〜1932年 | フーバー | 大恐慌 | 1931年 約-47% |
| 1973〜1974年 | ニクソン、フォード | 第1次オイルショック、ウォーターゲート事件 | 1974年 約-30% |
| 2001〜2002年 | ブッシュ(子) | ITバブル崩壊、同時多発テロ | 2002年 約-23% |
| 2007〜2008年 | ブッシュ(子) | リーマン・ショック | 2008年 約-38% |
※議会の上院・下院の一方のみが大統領と異なる党だった時期を含みます。株価は年間の値下がり率の概数です。
これらの暴落は、議会の構成が原因で起きたわけではありません。平均値を計算する年の数が少ないため、数回の歴史的な暴落が平均を大きく押し下げていると考えるのが自然です。RBCのデータを紹介した記事も、各平均はごく少数の2年間に基づいており、根拠としては薄いと注意しています。
「暴落が重なっただけ」と片付けるのも危険です。ねじれのもとでは、危機が起きたときに大型の財政出動がまとまりにくいという面があります。今回、上院と下院の両方を握る民主党と、拒否権を持つ大統領が対立すれば、景気後退時の対策が遅れる可能性は否定できません。過去の弱いデータは「ねじれが株を下げる」証拠ではありませんが、「危機への対応力が下がる」ことを示すサインとして受け止めておくべきだと考えます。
5.最も近い前例:2018年の中間選挙
今回と最も似ている前例は、トランプ1期目の2018年の中間選挙です。このときも民主党が下院の多数派を奪い、「共和党の大統領+ねじれ議会」になりました(上院は共和党が維持)。
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2018年10〜12月 | 利上げと米中貿易戦争への不安で、S&P500は高値から約20%下落 |
| 2018年11月の選挙翌日 | S&P500は大きく上昇(中間選挙の翌日として1982年以降で最大) |
| 2018年12月〜2019年1月 | 国境の壁の予算をめぐる対立で、史上最長となる35日間の政府機関の一部閉鎖 |
| 2019年(ねじれの1年目) | 米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに転じ、S&P500は年間で約29%上昇 |
2018年の例は、ねじれ議会のもとでの政治対立(政府機関の閉鎖)は短期的な波乱にとどまり、株価の方向を決めたのは金融政策だったことを示しています。今回の選挙翌日の上昇率も、この2018年に次ぐものでした。
なお、米カーソン・グループのライアン・デトリック氏は、1950年以降、中間選挙のある年の11月にS&P500はすべて上昇し、ある政党が上下両院を失った翌年も毎回上昇して、その平均は21.3%だったと指摘しています。また、S&P500は第二次世界大戦後、中間選挙後の12カ月間で毎回上昇してきたというドイツ銀行の集計もあります。ただし、これも20回程度の少ない事例であり、同行自身がサンプル数の少なさを注意しています。
6.これからの2年間:プラス要因とマイナス要因
ドイツ銀行のアナリストは、ねじれのもとでは一般に財政出動が通りにくくなると指摘しています。選挙翌日も、財政悪化への懸念が後退して米国債の利回りが低下しました。金利の低下は株価の評価を支える要因です。
新しい法律が通りにくくなるため、企業にとっては事業環境の大きな変化が起きにくくなります。「何も決まらないこと」は、市場にとってはむしろ安心材料になりやすいというのが、ねじれが好まれる理由です。
2026年4〜6月期のS&P500採用企業の利益は前年同期比で53%以上増え、当初の予想の2倍を超えました。株価の土台である利益は、選挙結果とは別に伸びています。
ねじれのもとでは、予算や政府の借入上限をめぐる対立が起きやすくなります。2011年には債務上限問題をきっかけに米国債が格下げされ、2018〜2019年には史上最長の政府機関の一部閉鎖が起きました。短期的な株価の波乱要因です。
選挙前から、民主党が両院を制した場合、AIのインフラ投資に関連する銘柄などに逆風になり得ると懸念されていました。議会の公聴会や調査、AIへの規制強化の議論は、AI相場が天井圏にあるかもしれない今、株価の重しになる可能性があります。
大統領と議会が対立していると、景気後退や金融不安が起きたときに大型の経済対策をまとめにくくなります。歴史的に「共和党の大統領+ねじれ」の成績が悪い背景の一つは、ここにあると考えられます。
7.投資家としてどう考えるか
ここまでのデータから、筆者は次のように考えています。
第一に、「どの党が勝ったか」で投資の方針を変える必要はないということです。平均と中央値で結論が逆転し、同じ民主党政権でもオバマとバイデンで結果が正反対だったことが、その理由です。株価を長い目で決めてきたのは、企業の利益、金利、そして景気の局面でした。
第二に、今回の結果で変わるのは「株価の方向」より「振れ幅」だと考えます。ねじれ議会のもとでは、予算や債務上限をめぐる対立が短期的な下落のきっかけになり得ます。一方、2018年の例のように、その波乱は長く続かないことが多いのも事実です。
第三に、むしろ注意すべきは政治以外の要因です。前回までの記事で書いたように、AI・メモリー関連株は天井圏にある可能性があります。選挙は株価の材料の一つにすぎず、FRBの金融政策、イラン情勢と原油価格、AI投資の持続性のほうが、これからの2年間の株価への影響は大きいはずです。
- S&P500や全世界株のインデックスを、10年以上の時間軸で積み立てている人
- 暴落時に買い増す資金とルールを、あらかじめ決めている人
- 政治ニュースで売買を変えないと決めている人
- 「政党の勝敗」で売買のタイミングを決めようとしている人(データの裏付けは弱い)
- AI・半導体などテーマ株の比率が高く、規制強化のニュースで値動きが大きくなる人
- 信用取引などのレバレッジで、短期の波乱に耐えにくい人
- 数年以内に使う予定のお金を、米国株で運用している人
まとめ
- 民主党が上下両院を制したが、大統領はトランプ氏のまま。2027年1月から「共和党の大統領+民主党の議会」のねじれになる
- 選挙翌日はダウ平均が1,500ドル超、S&P500が1.58%上昇。不確実性の解消と、ねじれによる財政の歯止めが好感された
- 政党別の株価は、平均では民主党、中央値では共和党が上回る指標もあり、計算方法で答えが変わる
- 直近の政権比較では、同じ民主党でもオバマ政権が最も高く、バイデン政権が最も低い。株価を左右したのは政党より金利と景気の局面
- 今回の組み合わせは歴史的に平均リターンが最も低いが、その中身は大恐慌やリーマン・ショックなどの危機の年。ただし、危機への対応力が下がる点には注意が必要
- 最も近い前例の2018年は、政府機関の閉鎖を経ても翌年は約29%上昇。政党より、FRBとAI投資の行方を見るべき
