マイクロン決算(2026年9月)を徹底解説|売上4.8倍・粗利率87%の中身と、決算書に書かれていないリスク

決算速報 2026年9月30日発表

マイクロン決算を読み解く
「売上4.8倍・粗利率87%」の中身と、決算書に書かれていないリスク

2026年度第4四半期(2026年9月3日までの3カ月間)は市場予想を上回り、次の四半期も強気の見通し。それでも株価はほぼ動きませんでした。数字を誰にでも分かるように整理したうえで、プロの投資家が見ているポイントまで踏み込みます。

米メモリー大手マイクロン・テクノロジー(ティッカー:MU)が、2026年9月30日(米国時間)に2026年度第4四半期と通期の決算を発表しました。同社の決算期は日本と異なり、今回の第4四半期は2026年5月29日〜9月3日の期間です。

この記事は前半と後半で役割を分けています。前半は「何が起きたのか」を専門用語なしで要約し、後半は機関投資家が見ているような視点で「この先どうなるか」「決算書だけでは見えないプラス面・マイナス面は何か」を整理します。

3行で言うと

① 売上も利益も過去最高を大きく更新し、市場予想も上回った
② 次の四半期(2027年度第1四半期、9〜11月ごろ)もさらに伸びる見通しで、会社は「メモリー不足がいつ解消するか見通せない」と発言
③ それでも株価は横ばい。伸び率の鈍化・巨額投資・景気循環のリスクを市場が天秤にかけている

1.まず要約:決算の数字を3分で

四半期売上高
542億ドル
前年同期の約4.8倍
(約8.6兆円)
粗利率(調整後)
87%
売上の9割近くが
粗利として残る
1株利益(調整後)
33.42ドル
市場予想
31.61ドルを上回る
通期売上高
1,332億ドル
前年の約3.6倍
(+256%)

※円換算は1ドル=158円で当ブログが試算

ひとことで言えば「作れば作っただけ高値で売れる状態」

マイクロンが作っているのは、パソコンやスマホ、AIサーバーの中でデータを一時的に置いておく「DRAM」と、データを長期保存する「NAND(SSDの中身)」という2種類のメモリーです。生成AIのデータセンターがこれを大量に必要としている一方、作れる会社は世界でほぼ3社しかなく、工場もすぐには増やせません。その結果、モノが足りないので値段がどんどん上がり、上がった分がほぼそのまま利益になっている──これが今回の決算の本質です。

項目今回の実績前四半期前年同期市場予想
売上高542.3億ドル414.6億ドル113.2億ドル510.7億ドル
調整後1株利益33.42ドル——31.61ドル
純利益(会計基準)377.0億ドル282.4億ドル32.0億ドル—
営業キャッシュフロー439.7億ドル253.9億ドル57.3億ドル—

出典:マイクロン決算発表資料、市場予想はLSEG集計(CNBC報道)

純利益が四半期だけで約377億ドル、売上の7割近くが最終利益として残っています。製造業としては異例の収益性で、6四半期連続で売上高の過去最高を更新しました。通期ではDRAMの売上高が初めて年間1,000億ドルを超えています。

2.中身を分解:何がこの利益を生んだのか

成長の主役は「数量」ではなく「価格」

プロの投資家がまず確認するのが、売上の伸びが「たくさん売れたから」なのか「高く売れたから」なのかです。今回はその内訳がはっきり出ています。

製品売上高構成比出荷量(前四半期比)販売単価(前四半期比)
DRAM398億ドル73%1ケタ%台半ばの増加10%台後半の上昇
NAND141億ドル26%約10%増約30%上昇

DRAMは出荷量の伸びが数%なのに対して単価は10%台後半の上昇。NANDも単価の上昇が出荷量の伸びの約3倍です。つまり今の好業績は、工場の生産能力が増えたからではなく、主に値上げによってもたらされています。これは強みでもあり、弱みでもあります(後述)。

事業部門別:4部門すべてが過去最高

部門主な製品・顧客売上高粗利率
コア・データセンター(CDBU)サーバー向けDRAM、データセンター向けSSD180億ドル(前四半期比+56%)90%
クラウドメモリー(CMBU)HBM(AI半導体向けの高速メモリー)など163億ドル(同+18%)83%
モバイル・クライアント(MCBU)スマホ・パソコン向け131億ドル90%
自動車・組込み(AEBU)自動車・産業機器向け68億ドル84%

注目すべきは、AIの主役と思われがちなHBMを含む部門(CMBU)の伸びが+18%にとどまり、汎用サーバー向けDRAMとSSDの部門(CDBU)が+56%と最も伸びた点です。データセンター向けSSDの売上は約100億ドルと、前年同期の10倍超に達しました。AI需要が「最先端のHBM」だけでなく、サーバー全体のメモリー・ストレージ需要に広がっていることを示しています。また、スマホ・PC向けでさえ粗利率90%というのは、消費者向け製品にまで値上げが浸透していることを意味します。

HBMと「長期契約」の進展

HBMの売上は会社全体より速いペースで伸び、2027年分のHBM供給の大部分について、前年より大幅に高い価格で契約済みとされています。また、エヌビディアと業界初のカスタムHBM4Eの開発でも協業しています。

さらに重要なのが「戦略的顧客契約(SCA)」です。マイクロンはこれまでに26件を締結し、2030年までの売上の35%超をカバーする見込みです。顧客からの前払いなどのコミットメントは320億ドルに増え、その大半は現金での預け入れです。契約収入の4分の3には価格の下限と上限を定めた枠組みがあります。メモリーという「市況品」を、長期契約で一部「予約販売」に変えつつあるという点で、過去のサイクルとは明確に違う動きです。

3.ガイダンスから見える今後

次の四半期(2027年度第1四半期)の会社見通し

項目会社見通し市場予想(発表前)
売上高615億ドル ±15億ドル570億ドル
調整後1株利益38.15ドル ±1.00ドル35.40ドル
調整後粗利率約86.25%—
営業費用約20.6億ドル—

出典:マイクロン決算説明資料、市場予想はLSEG集計(CNBC報道)

見通しも市場予想を上回りました。会社は、この四半期の粗利率が2027年度の「底」であり、残りの四半期はこれより高くなること、そして2027年度は全四半期で売上が前四半期を上回る見込みであることを示しています。

業界の需給:会社は「均衡が見えない」

マイクロンは、2027年と2028年のメモリーの需給は2026年よりもさらに逼迫するとの見方を示しました。業界全体の出荷量(ビット)の伸びは、DRAMが両年とも20%台前半、NANDが20%台半ばと予想し、どちらも供給が需要に追いつかない状態が続くとしています。そのうえで、業界のクリーンルーム増設計画を踏まえても、需給がいつ均衡に戻るかは見通せないと述べています。

プロが見る「数字の裏側」①:伸び率は確実に鈍化している

今回の第4四半期は前四半期比で約+31%成長しましたが、次の四半期の見通し(中央値615億ドル)は前四半期比で約+13%です(当ブログの計算)。業績の「水準」は過去最高を更新し続ける一方、伸びの「勢い」は半分以下に落ちる見通しです。景気循環株の株価は、水準よりも変化率に反応しやすいことを覚えておく必要があります。

設備投資は「2028年後半以降」に向けて積み増し

マイクロンは、2027年度の設備投資を従来計画より増やすと発表しました。増加分の多くは建屋の建設で、2028年後半以降にクリーンルームを早く使えるようにするためのものです。2027年度第1四半期の純設備投資は約115億ドルの見込みです。一方で、製造装置の導入は需要と市場環境に合わせて慎重に進めるとしています。主な工場の立ち上げ時期は次の通りです。

拠点出荷・生産開始の予定
シンガポール(HBMの後工程)2027年初め(予定より前倒し)
米アイダホ州 ID1工場2027年半ば
台湾・銅鑼(Tongluo)2027年半ばに本格出荷
米アイダホ州 ID2工場2028年後半
日本のDRAM工場拡張2028年後半
シンガポール(NAND)2028年後半
米ニューヨーク州工場2030年

この表から読み取れるのは、マイクロン自身の大型の新規供給が「2028年後半」に集中していることです。過去の記事で整理した業界全体の見通し(需給の転換点候補は2028年前後)とも時期が重なります。

4.なぜ株価はほとんど動かなかったのか

これだけの好決算にもかかわらず、発表当日の終値は1,066.10ドル(前日比+0.1%)、時間外取引では約0.8%下落と、反応は限定的でした。米ヤフー・ファイナンスは、投資家が強い価格動向と、巨額の設備投資、景気循環のリスクを天秤にかけたと解説しています。

アナリストの評価も割れています。目標株価の平均は約1,534ドルで、「強い買い」が多数派です。一方、ゴールドマン・サックスは決算後も「中立」と目標株価1,100ドルを据え置きました。決算前には、ウェルズ・ファーゴが目標株価を1,525ドルから1,400ドルに引き下げ、次の局面はメモリー不足がどれだけ続くかについての投資家の確信と、長期契約がどれだけ広がるかにかかっていると指摘しています。また、目標株価の最安値は361ドルと、現在値から約66%下の水準を示すアナリストも存在します。

要するに、「決算が良いこと」はすでに株価に織り込まれており、市場の関心はこの好況がいつまで続くかに移っています。

5.決算だけでは分からない「プラス面」

① 業界の価格は10〜12月期も上昇見込み

台湾の調査会社TrendForceは、2026年10〜12月期の汎用DRAMの契約価格を前四半期比で10〜15%、NANDを15〜20%の上昇と予想しています。AIサーバー需要で供給不足が続き、企業向けSSDは前四半期より値上がりが加速する唯一の製品とされています。会社の見通しを第三者の価格データが裏付けている形です。

② 「米国唯一のHBMメーカー」という地政学的価値

マイクロンは米国に本社を置く唯一のHBMメーカーです。米中対立や供給網の国内回帰が進むなかで、米国の顧客や政府にとって「米国製のメモリー」を確保する意味は大きく、ニューヨークやアイダホの工場建設もこの文脈にあります。この価値は損益計算書には直接表れません。

③ 前受金が「次の不況」への耐久力になる

長期契約に基づく320億ドルのコミットメントの大半は現金での預け入れです。価格の下限を定めた契約が多いことと合わせ、市況が崩れた局面でも売上と資金繰りの下支えになり得ます。メモリーが「ただの市況品」から脱しつつあるかどうかは、次の下降局面で初めて検証されます。

④ 「フィジカルAI」という次の需要

会社は、自動運転(レベル4以上)の車1台あたりのメモリー搭載量が200GBを超え、現在の運転支援車より1ケタ多いと説明しています。人型ロボットも同程度の搭載量が見込まれ、複数の顧客が次世代品を試験中です。データセンターの次の需要源として、2020年代末に向けて効いてくる可能性があります。

6.決算だけでは分からない「マイナス面」

① HBMのシェアは3社中3位で、しかも低下

調査会社カウンターポイントによると、2026年4〜6月期のHBM売上シェアはSKハイニックスが50%、サムスン電子が33%、マイクロンが18%でした。マイクロンは前四半期の21%から3ポイント低下し、サムスンはHBM4の出荷開始で急伸しています。決算資料の「HBMは会社全体より速く成長」という説明だけでは、この競争上の後退は見えません。

② 値上げが「需要の破壊」を始めている

TrendForceは、価格上昇の勢いは高い水準からの比較になるため鈍化すると予想しています。スマホ・PC向けではメーカー側のコスト転嫁で出荷が落ち込み、スマホ向けDRAMは顧客の在庫が積み上がっています。好業績の主因が値上げである以上、消費者向け需要の縮小は将来の数量の伸びを削る要因になります。

③ 「みんなで増産」の2028年問題

マイクロン自身の新工場は2028年後半に集中しています。サムスン電子やSKハイニックスも2027〜2028年に新工場の稼働を予定しており、中国のCXMTも7月の上場で巨額の資金を調達しました。各社が「足りない今」を前提に一斉に工場を建てれば、完成時期が重なった時点で需給が反転するというのが、メモリー業界で何度も繰り返されてきたパターンです。

④ 手元資金には顧客の預かり金が含まれる

通期末の純現金は683億ドルと巨額ですが、顧客からのコミットメント320億ドル(大半が現金の預け入れ)は、その約半分に相当します(当ブログの試算)。これは将来製品で返す義務がある資金で、自由に使えるお金とは性格が違います。「財務は盤石」という評価には、この点の割り引きが必要です。

⑤ 株主還元は利益に比べて極めて小さい

2023〜2026年度の4年間の株主還元は合計35億ドル(自社株買い14億ドル、配当21億ドル)で、2026年度単年の調整後フリーキャッシュフロー623億ドルの約6%にすぎません(当ブログの試算)。配当は1株0.15ドルで、利回りは0.1%未満です。稼いだ現金の大半が工場建設に回る構造で、株主は「値上がり益」に頼るしかありません。

7.投資家の視点:「割安に見える」ことの罠

現在の株価(約1,066ドル)を、次の四半期の1株利益見通し38.15ドルを4倍した年率換算で割ると、株価収益率(PER)は約7倍になります。直近1年間の実績ベースでも約14倍です(いずれも当ブログの試算)。成長企業としては一見かなり割安です。

景気循環株の格言:「PERが一番低いときが天井」

メモリーのような景気循環株では、利益が最も膨らんだ局面でPERが最も低くなり、そこが株価の天井になりやすいという経験則があります。市場が7倍程度の評価しか与えていないのは、今の利益が永続しないと見ているからとも解釈できます。逆に言えば、2028年以降も高い利益水準が続くと確信できる人にとってだけ、今の株価は「割安」です。

一方で、長期契約の拡大や価格の下限設定によって利益の変動が以前より小さくなるなら、市場が与える評価そのものが切り上がる余地もあります。「メモリーは市況品のままか、それとも長期契約に支えられた安定成長企業に変わるのか」──これが、今後数年のマイクロン株を決める最大の論点です。

マイクロン株が向く人・向かない人

向いている人
  • 景気循環株であることを理解し、株価が半値になる局面も想定して保有できる人
  • AIインフラ投資が2020年代後半まで続くと考え、2〜3年の時間軸で持てる人
  • ポートフォリオの一部(サテライト)として、比率を決めて保有できる人
向いていない人
  • 配当収入を目的にしている人(利回り0.1%未満)
  • S&P500や全米株インデックスをすでに多く保有し、半導体の比率が気になっている人
  • 「好決算なのに下がる」局面で狼狽売りしてしまいがちな人
  • 短期間で資金が必要になる可能性がある人

まとめ

  • 第4四半期は売上542億ドル(前年の約4.8倍)、粗利率87%と過去最高を更新し、市場予想も上回った
  • 成長の主因は出荷量ではなく値上げ。AI需要はHBMだけでなく、サーバー用DRAMやSSD全体に広がっている
  • 次の四半期も増収見通しで、会社は2027〜2028年の需給がさらに逼迫し、均衡時期は見通せないとしている。ただし伸び率は約+31%から約+13%へ鈍化する
  • 決算外のプラス面は、業界価格の上昇継続、米国唯一のHBMメーカーという立場、長期契約による下支え、フィジカルAI
  • 決算外のマイナス面は、HBMシェアの低下(18%)、消費者向け需要の減退、2028年後半に集中する業界の増産、手元資金に含まれる預かり金、小さな株主還元
  • PER約7倍(当ブログ試算)は割安にも見えるが、景気循環株では「天井のサイン」にもなる。好況の持続期間をどう見るかが、すべての判断の起点
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。決算数値はマイクロン・テクノロジーが2026年9月30日に公表した決算資料、市場予想・アナリスト評価・業界データは各報道機関・調査会社の公表情報に基づきます。PER・成長率・比率などは当ブログによる試算で、円換算は1ドル=158円としています。なお、筆者はマイクロン株を保有しています。投資判断は自己責任で行ってください。

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